TOP2005年記録

増水と雷の恐怖…

谷川連峰/万太郎谷井戸小屋沢本谷 (沢登り)

平田

【日時】2005年9月3日(土)〜4日(日)
【メンバー】飯田(L)、山口、石間、平田

9月3日(土)
 とても蒸し暑い天気の中、吾策新道入口の林道終点から万太郎谷左岸の旧谷川新道の踏み跡を辿り、井戸小屋沢出合に達するものの、下から本谷を遡行してきた石井パーティーと田邉パーティーとは殆ど掛かった時間は変わらず、水に浸かって涼しい分だけ沢に入っていた方が良かったかと少し後悔する。山口さんは体調が悪いようで、「ここで自分だけリタイヤしようと思う」とおっしゃっていたものの、飯田リーダーの「何とか頑張って行ってみましょう」の一言で、続行することに。
出合から二俣(右俣との出合)までは比較的小さな滝やナメが連続しており、快適に登れてなかなか楽しい。9月に入ったにも関わらず、小障子沢にはスノーブリッジが残っていて少し驚くが、飯田さんが2週間前に下見に来た時と比べると随分と小さくなっているとのこと。
 雲行きが段々怪しくなり、二俣に着いて休んでいる途中に雷が鳴り始め、ほどなくして大粒の雨も落ち始める。「とうとう来たか…。」という感じで右俣と本流の間の草付きの斜面を2〜3m上がり、ツェルトを被って様子を見ることとするが、雨はますます激しくツェルトを打ち付け、右俣と本流の流れも見る見る内に濁流と化しすぐ下まで迫って来ているので、逃げるようにさらに草付きを登る。万太郎本谷を挟んだ対岸方面を眺めると、沢筋という沢筋が全て白い滝と化している壮絶な光景が見て取れ、他のパーティーの動向が気に掛かる。結局、我々が最初に休んでいた所まで水は来なかったし、逃げようと思えばさらに上に逃げられる地形だったので比較的落ち着いて行動できたが、もしも二俣の先の核心部まで進んでいたら、と考えるだけでも恐ろしい。
 雨がようやく小降りになってきた所で出発するが、すぐに沢筋には戻らず、休んでいた草付きからそのまま連瀑帯を高巻くことにする。急斜面の笹藪こぎで体を持ち上げるのに苦労し、上半身にも疲労が蓄積していく。奥の二俣(標高約1500m)の少し手前で沢に下り立つ頃には増水も引いており、とりあえずひと安心。奥の二俣からは本流ではなく、記録性と稜線までの標高差を考えて右俣を進むこととするが、階段状の滝をいくつか越えると15mの登れない滝が現れ、左から大きく高巻くこととなる。ここでも急な藪の斜面を何とか登り、いくつかの滝を巻いた後、沢身に戻るべく短い草の生えた泥壁をトラバースする。この草付きが見た目以上に悪く、僕はバイルを出して慎重に進むもののスパイクを履いていなかったので足がツルツルに滑り、最後はかなりの距離の草付きを沢まで滑り落ちることとなった。石間さんや飯田さんのように5.10のラバーソールの沢靴を履いているならまだしも、フェルトソールの沢靴にも関わらずスパイクも着けなかったのは無謀としか言いようがなく、何とか無傷ではあったものの、深く反省している。山口さんはスパイクを着けてバイルを使いながら沢のすぐ近くまで順調に進んだものの、最後に足元が泥壁から岩壁に変わったのに気付かず足を置いてしまったため、沢に向けて3〜4m位滑り落ちてしまう。その時に胸を打ったらしく、直後はかなり息苦しそうにしておられたし、その後も痛みが引かないとのことだった(後日診断の結果、肋骨にレントゲンでも確認できないような小さなヒビが入っていたかもしれないとのこと)。
その後は大きな滝も現れず水量も減ったため順調に沢の源頭を詰め上がり、藪こぎを終えて何とか17時前に稜線の吾策新道に出ることができた。そこから万太郎山経由大障子避難小屋に向かう途中、再び雷鳴が聞こえ始め緊張するが、結局近づいて来る事は無かった。辺りが暗くなり始める中、18時過ぎに誰もいない避難小屋に到着し、ようやく長い一日を終えることができた。

9月4日(日)
 この日は再び万太郎山に登り返した後、吾策新道を下山するだけ。朝ゆっくりしても良かったが、遅い時間になると雷が怖いので、5時起き7時出発とする。膝を痛めている山口さんは、登りも下りもとてもつらそうに歩いておられた。(何もフォローできずにすみませんでした…。)標高が下がるにつれて蒸し暑さが増し、登山道も樹林帯に入るとぬかるんでいて滑りやすかったので、思いの外しんどかった。ただ、早く出発した甲斐もあって、心配していた雨にも雷にも見舞われなかったのは良かったと思う。
 井戸小屋沢本流の核心部は今回通過しなかったので確かなことは言えないが、健脚の人で、朝早く出発すれば、1日で下まで降りて来られるだろう。僕は今シーズンほとんど沢に入ってないこともあり、今回は何とか着いていくのが精一杯だったが、今度は体力面、技術面とももっと充実した状態で井戸小屋沢本流の遡行に再び挑みたいと思う。
【行程】
9/3 林道終点(8:05)〜 井戸小屋沢出合(9:40/50)〜 小障子沢出合(10:30-45)
   〜二俣(12:15/13:30、雷雨の為様子見)〜 奥の二俣(14:30)〜 稜線(16:55/17:10)
   〜大障子避難小屋(18:10)
9/4 大障子避難小屋(7:00)〜万太郎山(8:10-40)〜井戸小屋の頭(9:20-30)〜林道終点(13:00)
【地図】茂倉岳、水上